Introduction

邂逅

『評決のとき』から20年にわたりハリウッドの第一線を走り、『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞®主演男優賞に輝いたマシュー・マコノヒー。『ラスト サムライ』でアカデミー賞®候補になって以来、日本を代表する国際派スターとして活躍する渡辺謙。演技力と存在感で映画界に確固たる地位を築いた2人が初めてタッグを組み、驚きと感動に満ちた異色のミステリーを誕生させた。
舞台は富士山の北西に広がる青木ヶ原の樹海。そこを人生の終着点にしようと決めて日本にやって来たアメリカ人アーサー(マシュー・マコノヒー)は、原生林が鬱蒼と生い茂る森の中で、出口を求めてさまよう日本人タクミ(渡辺 謙)と出会う。怪我を負い、寒さに震えているタクミをアーサーは放っておくことができず、一緒に出口を探して歩き始める。しかし、まるで森の魔力に囚われてしまったかのように道はどれも行き止まりで、方向感覚を失った2人は厳しい自然との闘いを強いられる。その過酷な状況下、運命共同体となったタクミに心を開いていくアーサー。やがて彼は、樹海への旅を決意させたある出来事を語り始める……。

希求

磁石が狂い、携帯電話も通じない。樹海という魔の空間で、運命的な出会いを果たすアーサーとタクミ。生きる力をなくしてこの地へやって来た2人が、お互いに助け合いながら生き残るための闘いを繰り広げるドラマは、一見皮肉なサバイバル劇のように見える。しかし、物語の随所に埋め込まれたさまざまな謎が解き明かされていくにつれ、私たちはこれが見た目とは違う映画であることに気づかされる。結婚生活に問題を抱えていたアーサーを絶望の淵に追いやり、樹海へと向かわせたものは何だったのか? そこで彼が出会ったタクミとは何者なのか?なぜ彼らは出逢ったのか?
2人が出口を求めてさまよう森にはどんな秘密が隠されているのか?
ドラマの中に張り巡らされた疑問の縦糸は、セリフの中に隠されたキーワードや歌、本などの横糸と絡み合い、だんだんと1枚のタペストリーが織り上げられていく。その先に待ち受けるのは、思わず息を呑むような驚きの結末。死に場所へ向かう旅を描いているように見えた物語は生きることを希求する希望の物語に変貌し、さらには永遠に分かつことができない崇高な愛の物語へと姿を変えていく。その果てに広がるのは、胸に深く沁みわたる切なさと、心の底からわきあがる温かな感動だ。パズルのピースがすべてはまったあと、振り返ってもう一度最初から見たくなる――。本作は、そんな魅力を秘めた〈感動のミステリー〉なのだ。

旅路

アーサーを演じるのはマシュー・マコノヒー。罪悪感と喪失感を抱えて樹海へ足を踏み入れたアーサーが救いの光を見出すまでの旅路を人間味たっぷりに演じきり、観る者の感涙を誘う。そんなアーサーと森の中で出会うタクミには、近年、映画のみならずNYブロードウェイの舞台にも挑戦し、トニー賞主演男優賞ノミネート、更にはサントラがグラミー賞ノミネートにも輝く渡辺 謙。弱く傷ついた人物でありながらアーサーの魂を解放へと導いていく不思議な役どころを、存在感満点に演じている。さらに、ドラマの謎解きの要ともいうべきアーサーの妻ジョーンを、『21グラム』と『インポッシブル』でオスカー候補になった演技派女優のナオミ・ワッツが演じているのも話題だ。
監督は、『グッド・ウィル・ハンティング/ 旅立ち』『ミルク』でアカデミー賞®監督賞にノミネートされた名匠ガス・ヴァン・サント。『[リミット]』で脚光を浴びたクリス・スパーリングの脚本を、今回はスピリチュアルで詩的な味わいのある映画に仕立て上げた。